ウスバシロチョウ


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ウスバシロチョウはとても優雅に飛びます。 ハルシオンやフキに被われた開けた山の斜面を羽を広げて流れるようにフワフワと降りてきます。 そうして、上昇気流に乗って再びフワフワと斜面を登っていきます。 上昇気流がないときには、しかたがないらしくパタパタと羽ばたきながら斜面を登っていきます。 5月の明るい光の中で沢山のウスバシロチョウがゆっくりと飛んでいる光景をぼんやり眺めていると、魔法にかけられたように眠くなってくるのです。 優雅に、清楚に、はかなげに飛ぶウスバシロチョウも、近くで見るとご覧のように毛虫に羽が生えたかと思えるほどの不気味な姿をしています。 

毎年5月連休が終わった頃、私はウスバシロチョウの写真を撮りに出かけます。 ある年、沢山のウスバシロチョウが飛んでいる斜面を見つけ、昇り降りしながら蝶を追っていると、何処からかお爺さんが現れ話しかけてきました。 「何してる?」 「虫の写真撮ってます」 「モンシロチョウの写真か?」 「いえ、飛んでいるのはモンシロチョウじゃなくて・・・」 お爺さんはフーンと言うような顔をしてその場に座り込み、タバコを取り出して口にくわえ私にも勧めてくれました。 それぞれのタバコに自分で火を点け、私がどこから来たとか、サルが畑を荒らすとか、しばらく世間話をした後、お爺さんは戦争中に海軍の兵隊だったときの話をはじめ30分ほどして帰っていきました。 次の年も、その次の年も私がその斜面で写真を撮っているとお爺さんが現れ、私にタバコを勧め海軍の同じ話をして帰っていきました。

その次の年、斜面の下には「山菜取るな」の看板が立っていました。 私は山菜を採るわけではないので斜面に入り4時間ほどウスバシロチョウを追いかけて帰りましたがお爺さんは現れませんでした。 さらに次の年、斜面の下には「立ち入り禁止」の看板が立っていました。 これでは斜面に入るわけにはいかず別の場所を探しながら私は考えていました。 あのお爺さんは斜面の下の数軒の集落から見張っていたんだ。 誰かに山菜を持っていかれないように、いつも斜面を見張っていたんだ。 そうして、見張り役のお爺さんがいなくなってしまったので看板を立てたんだ、と。 その後、その斜面には行っていません。 その斜面ほど沢山のウスバシロチョウが飛んでいる場所をいまだに私は知りません。


ウスバシロチョウはアゲハチョウの仲間で北海道、本州、四国に分布、九州には生息していないようです。 雄はいつも飛び回っていてなかなか花に降りてこないのですが、雌は花に降りると比較的長い間吸蜜しているので写真は撮りやすいほうです。 写真は雌、写真は雄。 食草はムラサキケマン、いわゆるヤブケです。 いっしょに写っているのはツマキチョウ。


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